生活費

妻に渡す生活費、「他の家庭はいくらぐらいなんだろう」と悩んだことはありませんか?

「家庭によって同じようなケースがないのでそれぞれ違う」と言うのが答えなのですが、目安だけでも知りたいところですよね。

家庭の総収入、妻が専業主婦なのか共働きか、子どもの有無や人数や年齢、住まいの状況(家賃やローン、家賃補助の有無など)、夫婦それぞれの趣味に使う金額や小遣いなどによって、妻に渡す生活費の額は違ってくるのではないでしょうか。

さらに、「妻に渡す生活費の中から、具体的に何を支払うのか」によっても変わってきます。

家計の中から支出する項目としては、どのようなものがあるのでしょうか。

<家計の支出の項目>

おおまかに見て、家庭の支出には次のような項目が考えられます。

・住居費(家賃、住宅ローンなど)
・食費(外食以外)
・光熱費(電気、ガス、水道)
・通信費(電話、インターネットなど)
・交通費(車の維持費用等も含む)
・医療費(治療、薬代など)
・日用品、衣類、美容費
・娯楽費(交際費や外食イベントなども含む)
・教育費(学費、塾など)
・保険料(生命保険、学資保険など)
・ローンなどの返済(住宅ローンの他にあれば)
・夫や妻の小遣い
・その他雑費

多くの支出項目があることがわかりますね。

妻に渡す生活費の中に、これらの項目の中の何と何が含まれているのかで、渡す生活費の考え方が違ってくるのです。

男性の中には「妻に渡す生活費を、少しでも少なくしたい」とお考えの方もいらっしゃることと思います。

まさか「できれば生活費を渡さずに、自分で稼いだお金は全部自分で自由に使いたい」などと思ってるなんてことはないですよね。

<妻に渡す生活費をケチると「悪意の遺棄」になるかも>

婚姻関係にある以上、特に妻が専業主婦で収入がない場合などは、働いて収入を得ている夫の立場は明らかに優位に立っています。

その立場を利用して妻を従わせたりコントロールする事は決して許されることではありません。

「妻が家事をしない」「育児を放棄している」「妻が浮気をしている」など、妻に不満や文句があったとしても、だからといって生活費を渡さないというのは許されません。

民法第770条の中の「配偶者から悪意で遺棄されたとき」(悪意の遺棄)に当てはまり、離婚や慰謝料請求の理由にもなり得るのです。

これは婚姻費用分担義務の不履行、または、正当な理由のない扶助義務の不履行に当たります。

また、理由がないのに妻を追い出すことも、婚姻関係廃絶の意図があるとみなされて「悪意の遺棄」とみなされてしまいます。

もし、貴方が妻に生活費を渡さなかったり、少額の生活費しか渡さなかった場合、妻から「婚姻費用の分担請求調停」を申し立てをされるという可能性もあります。

「じゃあ、実際にはいくら渡せばいいんだ」と思いますよね。

婚姻費用(生活費)の算定方法については、裁判所が示しているものと、弁護士会が示したものがありますので、こちらも「妻に渡す生活費」を決める際の参考にしてください。

いずれも、夫の収入、妻の収入、子どもの人数と年齢で算出するものです。

養育費・婚姻費用算定表(家庭裁判所)

http://www.courts.go.jp/tokyo-f/vcms_lf/santeihyo.pdf

養育費・婚姻費用新算定表(日本弁護士連合会)

https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/2016/opinion_161115_3_01.pdf

また、少し古いデータではありますが、内閣府が5年おきに行っている「家事活動等の評価について」という報告で家事労働をお金に換算した結果を見てみましょう。

<家事労働を貨幣評価して考えてみる>

家事労働を貨幣評価する方法は次の3つがあります。

①家事にあてていた時間を外での労働に置き換えた場合に得られる報酬という視点で評価「機会費用法」(35歳女性の平均時給1,518円で計算)

例:35歳女性が平均的に1日7時間家事をし、週に1日休んだ場合
1,518円× 7時間× 25日= 265,650円/月

②家事の内容を炊事・清掃・保育などに分け、似ている専門職に従事する人の賃金で評価する方法「代替え費用法スペシャリストアプローチ」(35歳女性の時給で計算)

炊事(調理師、調理師見習い平均) 1,163円× 3時間= 3,489円
掃除(ビル清掃員) 992円× 2時間= 1,984円
洗濯(洗濯工)1,015円× 1時間= 1,015円
育児(保育士) 1,238円× 7時間=8,666円
買い物(用務員) 1,141円× 1時間= 1,141円
1日合計 16,295円
週に1日休んだ場合、407,375円/月

③家事代行の賃金で評価する方法「代替え費用法ジェネラリストアプローチ」(家事代行サービス専門職の時給を1,029円とする)

1日7時間家事労働、月25日労働とすると

1,029円× 7時間× 25日= 180,075円

さらに、子どもがいる場合は別途ベビーシッター代が必要。(ベビーシッターの時給を1,000円とする)

1,000円× 7時間× 25日= 175,000円

先程の家事代行と合計すると、355,075円/月になります。

このように無償の家事労働を「見える化」することで、妻に渡す生活費を渋っている男性にも家事労働について理解しやすくなるでしょう。

また、これらの金額を参考に「妻に渡す生活費」を決めていただくこともできるかと思います。

<さいごに>

私の知人で、体が弱く働きに出られず、病院通いをしている女性がいます。

モラハラ気味の夫からは「なぜ働かないんだ」などといつも言われ、夫は自由にお金を使っているのに生活費はほとんど入れてくれないという状況で長年苦しんでいます。

妻に何か気に入らないことがあるのかもしれませんが、婚姻関係にある限りは妻にも夫と同じレベルの生活を送る権利があるのです。

妻に渡す生活費の額については、「今現在、何にいくら使っているのか」家計簿などで把握して、無駄がないかをチェックした上で、我が家の生活費が月々いくらあれば足りるのかを割り出しましょう。

そして、できれば夫婦で話し合い、お互いに納得した金額で「月々の生活費をいくらにするか」決めていただきたいと思います。

妻に渡す生活費をケチって、夫として父親としての評価を下げることのないようにしてくださいね。