父親親権

Twitterなどの投稿で「離婚によってやむなく愛する我が子を手放したり、会えなくなったり、母親に無理矢理連れ去られたりして毎日辛い思いをしている」という男性が多くいることがわかります。

離婚しなければ子どもと一緒に生活ができていたのに、離婚によって子どもと自由に会えなくなってしまう。

「親権」という意味では男性は多くの場合不利な立場に置かれてしまいがちです。

離婚の際に父親が親権を取ることは可能なのでしょうか。

まず、「親権」には”身上監護権(生活や教育全般や身の回りの世話をする権利)”と”財産管理権(子どもの代わりに財産を管理したり契約などの法的な行為をする権利)”があります。

父親と母親がこの権利を分けるケースもありますが、多くの場合どちらかが両方の権利を持つことが多いようです。

また、子どもが複数いたら、親権はそれぞれの子どもについて取り決めます。

離婚に際しての「親権」の決め方は、離婚の方法によって異なります。

夫婦で話し合って離婚の条件などを決める「協議離婚」の場合は、夫婦で話し合って折り合いがついたところで決めることができます。

子どもに関わることで”親権”以外の”面会交渉権”や”養育費”などについても決めておくことが大切です。

調停委員が間に入って離婚の条件などを話し合う「調停離婚」では、調停委員が入ってくれるので夫婦が話し合えなくても離婚の条件についてや、「親権はどちらがとるか」などについても話を進めてくれます。

後になっての「親権」の変更はかなり困難なようなので、離婚の際に慎重に決めるようにしましょう。

調停などでは、どのような基準で「親権をどちらがとるのか」を決めていくのでしょうか。

さまざまな要素が考えられますが、次のようなことを参考にして決めるているようです。

離婚後の生活環境(子どもの生活時間に合うか)

  • 離婚後の子どもの住まい(地域や学校などを考えて)
  • 夫婦それぞれの”監護に対する意欲や能力”
  • 経済力(無いより有った方がいい)
  • 心身の健康状態(育児や養育が遂行できるか)
  • 時間的な余裕があるか(子どもと過ごす時間)
  • 子どもの年齢や意思(年齢の段階に応じて)
  • 兄弟姉妹不分離の原則(兄弟や姉妹はできるだけ離さない)
  • 子どもの心身発達状況
  • 親の生活態度(夜勤・出張・残業が多い、不倫している等)
  • 現状尊重(今までとあまり変わらない環境が望ましい)
  • 監護補助者の有無(実母の協力など)
  • 母親優先(特に子どもが幼い場合)

ほとんどの項目で、母親が有利なように思えてしまいますね。

では、実際に父親が「親権」を取りたい場合には、どうしたらいいのでしょう。

父親が親権を取れるケースとしては、次の3つの場合が考えられます。

①父親側の環境が好ましい場合

父親が親権をとるためには、父親側の環境が良好なことが望まれます。

では、どのような環境が望ましいのか、いくつか挙げてみましょう。

  • 別居および離婚の前から父親が家事や育児に積極的に参加し、日記などにその状況を記録して残すようにしておく
  • 残業や休日出勤を減らしたり出張を控えるなどして子どもに生活リズムを合わせる努力をし、父親が主となって監護できる体制を整える
  • 子どもとの関係を良好にしておくことで、子どもが父親との生活を希望する可能性が高くなる
  • 監護補助者として実家の母親などの協力体制を整えておく
  • 少なくとも半年程度、父親が主として監護している事実があることが望ましい

以上のようなことを心がけて、好ましい環境づくりをしていけるといいですね。

②母親側の環境が悪い場合

母親が親権を取りにくい環境については、次のようなものです。

  • 母親が子どもにご飯を食べさせない、お風呂に入れないなど、育児や養育を放棄している
  • 母親が長時間や夜間の仕事で子どもだけの留守番が多くなる
  • 母親から子どもへの暴力や虐待がある
  • 母親が不倫に夢中になり子どもを顧みない
  • 母親が重度の精神疾患を患っている、薬物依存がある

母親がこのような場合には、父親に親権が渡る可能性があります。

③子どもが望んでいる場合

子どもの年齢にもよりますが、0歳~9歳の場合の多くは母親が必要と考えられますが、10歳~14歳になると子供の意見も尊重して決められます。

15歳以上になると子供の意見を聞いて親権を決めることができます。父親がどうしても親権が欲しい場合は、”子どもがある程度成長するのを待つ”という考え方もありますね。

いかがですか。

親権が欲しいと思っているなら、安易に別居して子どもと離れることはお勧めしません。

かといって、子どもの連れ去りは”誘拐”の罪になりますので絶対にダメですよ。

夫婦がすでに別居している場合には、貴方は子どもの生活費や学費などの養育費をきちんと負担する、子どもとできるだけ会うようにする、会えない場合でも面会を希望していることを手紙などで伝え続けることが大切です。

離婚に際して、もし親権が取れなくても、面会交流権は子どもの権利でもあるので、きちんと会えるように取り決めましょう。

離婚の際に夫婦で「親権」についての話し合いがうまくできない場合には、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることも有効です。

もし、子どもを連れ去られてしまった場合には、離婚が成立する前に、監護者指定や子の引き渡しの審判を申し立てることもできます。

また、離婚に詳しい弁護士に依頼することも有効です。

子どもと一緒に暮らしたいのに、「どうせ親権は母親に行ってしまうんだろう」と簡単にあきらめずに、できる限りの工夫や努力をしてみることをおすすめします。